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陸上部の思い出

C組・松村 秀典
  

      新宿高校25回生卒業のみなさん、まずは卒業30周年おめでとうございます。
    記念CDの作成に当たり原稿の依頼を頂き、とてもとても重い筆をとった次第です。
      思い出すと、私が陸上部に所属していた時代は、陸上競技そのものが、今に比べてとてもマイナ
    ーであり、いつも校庭の端っこに追いやられ、時には他のグランドに練習場を求めながら、もくも
    くと走っていた記憶が残っております。それは現在と違い、日本人で世界的に活躍できる選手がほ
    とんど居なかったことにも原因はありますが、注目度が低く人気のない、また自分自身との戦いと
    いう性格上、暗いイメージをもった競技であったような記憶があります。
      そんな中でも注目を浴びたい、少しでもメジャーになりたいと孤軍奮闘して始めたのが、当時は
    画期的であったハイジャンプの背面跳びでした。今でも自慢は、この背面跳びを我が校ではじめて
    自分が導入したことであります。固い砂場に着地しても大丈夫なようにスポンジのマットを用意す
    ることから始まり、イメージトレーニング、コーチのいない自分ひとりだけの練習で、試行錯誤し
    ながらその飛び方を完成させ、自己ベストの更新と関東大会への出場権を得たことは、充実感のあ
    る体験でした。またそれをうまく後輩達に引き継ぐことができ、彼らが活躍していったことも、少
    しは陸上競技に注目を集める上でのアピールになったような気がします。
      考えてみると、この陸上部で得た体験は、結構自分の人生に少なからず影響を及ぼしているよう
    です。
    実は今年に入って、まさかのリストラ・そして失業と現在の中高年のトレンドをまともに受けて
    しまいました。人生の転機を迎え、それでも失意の中からすぐに立ち直りのきっかけを作れたのは、
    失業中に30年振りに再開した毎朝のジョギングだったような気がします。走りながら頭の中を整理
    し、自分の迷いと不安を拭いのけ、それが自分自身を勇気付けることにもなりました。
      陸上競技で得た、孤独の中での自分との戦いは新宿高校で得た知識の中で、最も貴重なものの一
    つであったような気がしています。
      高校を卒業して30年、人生の半分は過ぎ去ってしまいましたが、まだまだ先は長いと思っていま
    す。そしてこれからも、走り続けて行きたいと心に誓っております。何が起ころうとも自分を高め
    るために……。